トレーニングにおける体力・技術の相補性
村木征人(筑波大学)
スポーツトレーニングにおける総ての基本的「手段」は運動であり,その基本的「方法」は種々のタイプの反復にある。これらの運動は,専門とするスポーツ競技の試合運動の基本的な運動形態・機能を基準に,より近縁関係にある「専門的運動」(試合的運動を含む)と,反対により遠縁関係にあり理論的にはあらゆる運動を含む「一般的運動」とに大別される。これらの運動はまた,それぞれに内在する多面的な側面とそれらの諸細目によって理論的に特徴づけられ,明示的(時には非明示的)なトレーニング課題や目的として扱われる。これらは技術(戦術を含む),体力,および心理面であり,更にそれぞれで諸細目に区別される。しかし,総ての運動自体は不可分な全体としてのみ現象し,これら多面的側面とそれらの諸細目は,観察者の意図と観察装置とに基づく一定の定量可能な範囲での相互作用による観察結果に過ぎない。それらは同一の対象である運動の二つの面の記述結果であり、対象とする運動を媒介として相互に変換可能なものでなければならない。
本論では,スポーツ方法学の中心課題でありながら,一面的・断片的に扱われる傾向にある体力および技術課題について,不可分な全体としての運動の相対性および相補性原理の観点から再考し,実践面での相互に変換可能な条件として、運動の一般性・専門性の相互関係、および最大下負荷でのトレーニング意義について話題を提供したい。